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タルタロスオンラインの二次創作小説ブログです。
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    エルテイル喫茶店長の奮闘日記 ~バレンタインデーイベント編~③

    前回の続きです。

    本文:花京  挿絵:しろがね かいと

     




    3.
     お店が開店すると、新入店員のソーマは着なれない制服に不安そうな表情を浮かべていた。
    「そんなに緊張することは無いっ!まずはお客さんから注文を聞いてメモしてくるんだぞ。」
     シュバルマンは明るい笑顔を浮かべると、ソーマの肩を叩いた。ちょっと肩がしびれたが、彼は少し緊張がほぐれたようだった。
    「はいっ!行ってきます。」
     丁寧にお辞儀をしてから、ソーマはフロアーに入って行った。
    「何か…新人さんっていいよな。」
     シュバルマンはしみじみとソーマの背中を見送りながらつぶやいた。後ろから陰険黒メガネ店長が箒を片手に立ちふさがっている。
    「何を油売ってる。私が唯一間違えたのは貴様の人選か?さっさと働けっ!!」
     箒の柄の部分が丁度シュバルマンの頭を直撃して、とてもいい音が鳴った。
     朝日もだいぶ高くなって、日の暖かさも感じられるようになってくる。朝の10時を過ぎるとモーニングティーのお客の入ってくるのでお店も賑わってくる。
    「美しいお譲さん、あなたにはこの赤いバラがよく似合う。差し上げますよ…。」
     アエルロト甘い声とその怪しい流し眼に若いお嬢さん方は惚けている。
    「そこっ!花束ではなくメニューを渡せと…何度言って聞かせた?!」
     店長の指摘にアエルロトは軽く受け流す。
    「569回です、クロモドさん。しかしながら、こんなに美しいお嬢さんを放っておくわけには…。」
     クロモドがアエルロトに何か文句を言いかけたその時だった、
    「店長~大変ですぅ!!」
     厨房から悲鳴が聞こえた。
    「今度は何だ…。」
     クロモドは深いため息をつくと、疲れて重い足を引きずるようにして向かった。
    「お客様の前で大きな声では言えませんが…大ネズミが出たんですっ!退治していただけませんか?」
     駆けつけると、厨房には何故かミドレンが大量発生していた。
    「…くっ。前途多難とはこのことかっ!」
    「ちょっと待って、店長が魔法を使ってしまうと厨房が使用不可能になっちゃうっ!」
     ルコが慌ててクロモドの箒を押さえた。確かに、ここで魔法など放ってしまうと、ガスに引火しそうだ。
    「よしっ!俺の出番のようだなっ!」
     何処からともなくやってくる、その名は正義の味方と言わんばかりに看板を背負ってやってくるシュバルマン。
    「早急に頼む。」
     自分がネズミ掃除出来ないのが残念だとクロモドは箒を納める。
    「任せとけっ!」
     副店長の腕の見せ所である。ネズミたちに気合いでぶつかると、あっという間に看板を振り回しネズミたちを一掃する。
    「…仕事に戻るか。」
     クロモド店長は出来て当たり前の結果と言わんばかりに、さっさと行ってしまった。
    「さすがですね…私の出る幕がありませんでした。」
     ようやく注文を聞き終えて、どこから現れたのかアエルロトはシュバルマンを褒めたたえる。
    「って…おまえ、女の子とばかり話してて、これっぽっちも手伝う気なかったんじゃないのか?」
    「それは誤解ですよ…シュバルマンさん嫉妬ですか?」
     楽しそうにアエルロトは微笑む。
    「断じて違うっ!」
     否定の仕方が必死なのは気のせいか?顔が朱をさしたように赤い。アエルロトは意地悪な笑みを浮かべる。
    「心配しないでください、それに、私の心はいつもシュバルマンさんのモノですよ。」
    「し、心配なんて…別に、してないぞっ…それに俺には…い、イリシアさんが!!」
     さらにシュバルマンの顔は赤くなる。俺は必死に言い訳しなければならないんだ?しかも、イリシアさんが聞いていたら恥ずかし過ぎる。それにしても、何故この男は俺に絡んでくるのだろう、面白がっているようにしか思えないのだが。色々考えるうちに考えてる自分にも悶々としてきた。
    「それでは、そんなに顔が赤いのですか副店長?」
    「それはな…怒ってるからだーっ!!」
     我慢できなくなったのか、両手を振り上げて叫ぶバルマン。山になっていたネズミの死体が一気に崩れて、食器の山がドミノ倒しになって割れ、その音に驚いたナナが鍋をひっくり返す。その拍子にイベントケーキ用に用意していた小麦粉の袋の束がさらにドミノ倒しで倒れたから大変、粉が厨房中に広がって、隣の人の顔さえ見えないほどに真っ白になった。
    「店長~大変ですぅ」
     こうして、店長の深いため息は収まるどころか…さらに深まるのであった。

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