前回の続きです。
本文:花京 挿絵:しろがね かいと
7.
小麦粉の問題を減らすことはできたエルテイル喫茶店だったが、昨日の会議での皆のバラバラな意見をまとめていたクロモドは再び、店で朝を迎える羽目になった。
「わん…。」
気づくと、目覚ましのお茶をもってきたアルポンスが心配そうにクロモドを見つめている。
「大丈夫だ…私の代わりに、誰が出来るというのだ?」
散乱した書類の中に突っ伏して寝ていた、クロモドはお茶を受け取ると一気に飲み干した。
「わんわん!」
アルポンスが慌てて走り回る。箒を片手にクロモドが床に散らばった書類に魔法をかけると、一気に竜巻が起こって、書類がきれいに積み上がっていた。
「さあ、仕事だアルポンスっ!」
今日もエルテイル喫茶の1日が始まる。今日は店自体はイベント準備のため閉めるのだが、やることは沢山ある。バレンタインデーイベント用の飾り付け、試作品ケーキの考案&試食会、宣伝用のポスターチラシの作製、配布、人集めなどなど…時間が押してしまったせいで、1日でやらなくてはなくなってしまった。
「このドアベルのクモの巣掃除しておけ…ん、命令する前に私がやったほうが早いようだな。」
店の壮観を確認していたクロモドは、箒で華麗にクモの巣を払う。
「どうですか?ケーキが美味しくなるように薬草を入れてみたんですっ!」
掃除をしている店長の肩をたたくナギの手にはケーキが。妙に緑色のケーキからは何とも言えない体に良さそうな薬臭い匂いがする。口に入れた瞬間クロモドの眉が動く。
「…却下。」
クロモドは頭を抱えつつ、バッサリと言い切った。
「テンチョー、このリボンは赤よりピンクがいいと思うだけど、どう?」
ロボと一緒に店の飾りをつけていた、ピンコが尋ねてくる。
「…任せる。」
可愛いものは女の子に任せたほうが得策だ。
「クロバットの羽が足りないよー。」
ナナシェフが材料が足りないと泣きべそをかきそうだ。それはさすがに困ると、クロモドは一瞬にして状況を把握すると、
「シュバルマンっ!早急に集めろ…」
…と、命令する。
「何で面倒なことは俺なんですかっ!!」
思わず、シュバルマンはツッコんだ。
「暇を持て余しているのだから当然だ。ところで、マネージャー…アエルロトはどうした?」
周りを見渡すと確かに、アエルロトがいない。
「さっき、急用を思い出したとかで…店を出て行きましたけど。」
玄関ですす払いをしていたソーマが言った。
「また居ないのか…この忙しい時…に…」
クロモドは急な頭痛でこめかみを押さえる、持っていた箒が音を立てて落ちた。足がおぼつかない。シュバルマンがとっさに支えなければ倒れるところだった。
「大丈夫ですかっ!」
「…いや、問題ない。それに…今は…まだ…」
クロモドはシュバルマンの手を振り払うと立ち上がろうとするが、うまくいかない。体全体に力が入らない様子で、そのまま床に倒れこんでしまった。
『店長っ!!』

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