11.
結局、2時間ほど粘ってシュバルマンとアエルロトは土け座して謝り、店員の皆でクロモドを説得して何とか事を納めることが出来た。
そして、お待ちかねの2月から始まったバレンタインデーイベントは可愛いメイドさん衣装のウェートレスと選べるバレンタインデーお菓子とあって、出だしから好調だった。
「繁盛しているようだな…シュバルマン。」
「ランドスっ!!」
カランカランとドアベルが鳴ると、ライバル店デリオ喫茶店の店長が乱入してきた。傍らにはロベルアとムーアも一緒だ。
「何しに来たっ!偵察か、それとも妨害か!!」
シュバルマンは警戒した様子で身構える。メイド姿の女子店員達も不安そうな表情でその様子を見守る。
ランドスは豪快に笑うと席に着いた。
「騒々しいぞ、私はお客だシュバルマン。」
いつもならシュバルマンと一触即発になるランドスが、なんと彼を素通りする。
「ら、ランドスさま?」
ランドスの言葉にロベルアとムーアは言葉を失う。実は、デリオ喫茶店は昨日、サロマン族に襲われ店がめちゃくちゃされてしまい、2月は営業中止になってしまったのだった。腹いせにリクルレイン店長に命じられてエルテイル喫茶店の妨害にやってきた、はずだった。
「うむ…メイド喫茶か。1度来てみたかったのだ。」
ランドスは柔らかな笑みを浮かべる。メイド姿のウエートレス達に戦闘力を奪われていた。丸い袖から伸びる細い華奢な腕には銀色のプレート、ふわりと広がるレースの付いたピンクのスカートと白いエプロンの組み合わせが華やかだ。スカート丈も長過ぎず、短すぎず清楚なイメージで、正にメイド姿の王道だ。
「客としてきたのかよ。」
シュバルマンは思わず脱力して膝をくずした。
「ランドス様…メイド萌えだから。」
ムーアは無表情で呟く。
「きぃー。いけませんランドス様、帰りますわよっ!!」
ロベリアの扇子がランドスの頭に直撃するが、彼はメイド達に見惚れたままだ。仕方なく、ロベルアとムーアはランドスを引きずるように連れていく。シュバルマンは笑いを押さえきれない様子で悶えている。
「ご主人様、また来てくださいねw」
可愛らしくお見送りのナギの精神攻撃が素晴らしい。ランドスは名残惜しそうに涙をぬぐうと、小姑二人に引きずられていった。
「一体、あの人たち何をしに来たのでしょうか?!」
ソーマが呆気にとられて叫んでいる。
「ところで、アエルロトはどうした?」
シュバルマンが周りを見渡して尋ねる、ソーマは知らないと首を振った。
「…人に会うと。表情が…暗かったのが気になるわ。」
イリシアが不安な表情を浮かべていた。そのとき、シュバルマンの携帯電話が鳴った。着信を見るとアエルロトの番号だ。
「アエルロトっ!今どこだ!!」
「…シュバルマンさん、よかった。」
シュバルマンが急いで電話に出ると、緊急事態を要しているので、一人で来て欲しいと切迫したアエルロトの助けの声だった。イリシアさんの悪い予想が当たってしまったようだ、彼は店を飛び出すと何も考えられずに走り出していた。
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